彼は、理想の tall man~first season~

「相手が解ってくれてる“だろう”って男の考えは――単に相手に甘えてるだけだ」

「・・・・・・」

「俺に言わせりゃ、寂しいって言葉のひとつも言わせてやることの出来ねぇ男なんざ、仕事出来ようが金持ってようが、単なる甲斐性なしだな」


どこか遠い目で話しているマスターは、自分の経験も踏まえて言ってくれたように思えた。

ただ、『生きてりゃ――』なんて、マスターにそこまで言わせてしまって、古傷を下手にえぐってしまったように思えて、なんだか申し訳ない気持ちになった。


でも――マスターの話を聞いていたら、ここ最近の私は、全て“だろう”で決めていたように思えて、反省しないとだって、そう思った。


相手がこうだろうって、勝手に思って決め付けて。

相手に求めるばかりで、自分からは何もしない。

挙句の果てには、なかったことだったのかもとか思って、踏み込もうとしなかった。

偏屈で、迷妄して――。


「相手の状況を考えて、それで行動すんのもありだけど、どっちもなんもしねぇ状況じゃ、なんも変わんねぇぞ」

「――ですね」

仮想ばかりの考えは――何も生み出さないということ、か。
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