彼は、理想の tall man~first season~
「頭ん中で恋愛してねぇで、ここでしろ、ここで」
そう言って、マスターは、自分の胸元を軽く叩いていた。
「やっぱり、マスターに聞いて良かった」
「あ?」
「私には、まだ難しいけど。でも、“だろう恋愛”にならないように、頑張ってみる」
「美紗にしては前向きだな」
「うん。いい加減、恋愛も頑張らないと」
それに――人間いつどこでどうなるか。
私は今を生きているんだから、悔いが残らないように生きないとなんだ。
じゃないと、マスターがここまで私に言ってくれた事が、無になってしまう。
「楽しいばっかでもねぇけど、想う相手がいるなら、自分からぶつかってけ」
「肝に銘じて頑張ります」
全部が全部そうではないと思うけど、私の今の状況を的確に捉えて言ってくれたんだよね?
口と人相は悪くても、昔からなんだかんだで頼りになるし、マスターは信頼のおける人だ。
前向きに自発的に、本当に頑張らなきゃな――。
「よし! んじゃ、恋愛相談所は営業時間が終了だな」
「ありがとうございました」