彼は、理想の tall man~first season~
「中條さん、聞いてますぅ?」
「――――」
「麻倉君もぉ」
「――――」
やはり、仕事の疲労以上の、妙な疲労感が全身に広がる。
本当に、早く帰ってくれねぇかな。
俺と尚輝は完全にシカト。
お互いに相手にするのもどうかといった具合だ。
この店に入った直後、尚輝が声を掛けた店員もしくは店主が、「美紗なら今裏にいる」と、そう言っていたが――。
早く会えないものかと、そう思いながらやり過ごしていると、尚輝の所へひとりの女の子が屈み腰でやって来た。
「尚君!! 久し振りっ!!」
「あれ、トモちゃん?! 超久し振りじゃん。来てたの?」
うんうんと頷いている女の子を見て、どこかで見たことがあったか――と、考えた。
「ひとり? あ、もしかして美紗と来たの?」
「ううん、彼氏と一緒に」
「あれ、彼氏出来たの?」
「うん。尚君も会ったことあったよね?」
彼女が視線を動かした先には、こちらを見ているひとりの青年の姿があった。
「あれってマ-シ-だよね?」
「うん」
「いつの間に――っあ、でも美紗から聞いたことがあった気もする」