彼は、理想の tall man~first season~
青年が、こちらに向かって軽く手を振っていて、尚輝も軽くそれに応えていた。
「ねぇ、尚君ちょっと時間ある? ってか、隣の女の人って尚君の彼女?」
「トモちゃん、冗談でも、それキツイ」
こそこそと話してはいるが、会話は微妙に聞こえて来る。
「じゃあ、隣の人のってことでもないんだよね?」
「うん。あ! 紹介しとこうかな。俺からってのも変だけど」
「え、なになに?」
「中條敦さん、美紗の彼氏」
「えっ!? 美紗の!?」
「そう、トモちゃんなら、美紗からなにか聞いてるでしょ?」
無言で――しかも高速で頷くから、その仕草に思わず噴きそうになった。
「中條です、どうも」
「うわ、わ、あのっ、美紗とは大学からの付き合いで、佐野智子と申します」
トモコちゃんね。
良くある名前だ――。
だけど、そこでなにか引っ掛かった。
――トモコ。
トモコ?
トモコって、もしかして。
「ねぇ、中條さぁん!! 里奈の話聞いてますぅ?」
隣にいるなら、この状況で聞いてる訳ねぇだろって、ドヤしてやりたい気持ちが芽生えた。
が――そこで尚輝と目がバッチリ合った。