彼は、理想の tall man~first season~
これが全く無縁の知らない女なら、うなり飛ばしたい所ではあったが。
同じ会社というのは、時に厄介なものだ。
席を立ったのが、丁度曲と曲の合間。
その状況にホッとしつつ、トモコちゃんの彼氏が座っている場所まで移動した。
「いやぁ、敦さんて結構言うんだね」
「ん? なんか限界を感じた」
「アハハッ。いやいや最高だったなぁ。月曜日、小川さんに報告しなきゃ」
同期の小川は口が軽い。
小川に言われたら言われたで厄介だとも思ったが。
なかなかの女タラシでもある小川なら、あの彼女らになんらかのフォローをしてくれるだろうから、別にそれならそれで逆に助かるか――。
漸く解放された香水地獄に、胸の中もスカッとしてた。
「いやでも、美紗が今の4人でいた所を見てたら、勘違いしてるんじゃねぇかなって、俺思ってたんですけど」
「はあ? それはないだろ。あの状況だぞ」
「まぁ、そうっすかね」
俺は――双子の予感を、甘く考えていたのかも知れない。
ただこの時の俺には、その事を掘り下げて考える余裕がなかった。
一緒にいたはずのトモコちゃんは、いつの間にかカウンターに移動していた。