彼は、理想の tall man~first season~

「いや、尚輝も背高いけど、中條さんも高いっすね」

「敦さんは俺より高いよ」

マジかよ――なんて言っていた柏木君だったが。

『美紗の奴も、本当に拘りは捨ててねぇんだな』

彼が独り言のように呟いた言葉が、俺には聞こえてしまった。


彼女の拘りは、間違いなく背。

彼女の男友達から、俺は背だけの男と言われているような気がしないでもないが――。

それは承知で付き合ったんだ。

今更気に揉むことでもないかと思い直した。


そして、柏木君が俺を見ながら面白いこと教えてあげます――と、ニコッと笑った。

その顔は、とてもじゃないが尚輝と彼女と同い年には見えない少年のような顔で。

若いって、いいな――なんて思ってしまった。


「さっき、美紗がトモと、彼氏に連絡してないし来てないどうしようって、話してましたよ」

「え?」

「そんなことで狼狽えてる姿なんて、俺今まで見たことなかったから。なんか、美紗も案外女の子なんだなってホッとしました」

「―――」


彼女が狼狽える?

それはいくらなんでも大袈裟なんじゃ――そう思ったが。
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