彼は、理想の tall man~first season~
「あ! さっき、マスターと美紗の連弾をリクエストしてたんですけど、どうなったか聞いて来たんです。そしたらOKだって」
「――連弾?」
「はい。1台のピアノを2人で弾くんですけど――」
とても楽しそうにトモコちゃんは説明をしてくれていたが。
マスターと美紗の連弾?
俺はそこに引っ掛かった。
「ねぇ――弾くって、彼みたいに、あそこのピアノで弾くってこと?」
「はい!! カッコいいですよ。黒のド―――あ!! ここから先は、見てのお楽しみですね」
彼女がこれから、あのステージでピアノを弾くということに、俺は驚いた。
ふふふっと笑ったトモコちゃんは、「あの、これが私の彼です」と、尚輝と話していた柏木君を俺の方に向かせた。
「将也、こちら中條さん。美紗の噂の彼氏だよ!!」
柏木君に俺を簡潔に紹介してくれた――が。
「もう挨拶はすんでるよ」
柏木君がそう言うと、少しふて腐れ――。
「あ、そうなの? なんだ、そうだったのか」
つまらない、とでもいった雰囲気。
その表情を見て、柏木君は笑いながら「残念でした」なんて言い、彼女の髪をくしゃりと撫でつけた。