彼は、理想の tall man~first season~
俺と尚輝は、そのまま完全に移動することにした。
ステージに近い席は2人掛け。
ステージから一番離れたここは5~6人で座れるテーブル。
ここに柏木君達が座っているのは不思議だったが。
そこそこ騒々しい状況となった今、一番奥の席で良かったと客観的に思った。
「ゴメン、ちょっとオーダー待っててもらっていい?」
「いいよー、売上あがんないだけだから、俺は別に」
「アハハ、尚輝って本当にいい性格してるよな」
「よく言われる」
バーテンは笑いながら、トモコちゃんからグラスを受け取り、一旦下がった。
そして他のテーブルの空いたグラスも下げながら、オーダーを取り、忙しなく動いている。
BARの店内を見ながらも、手と足は止めない。
そんな姿を見ていたら、彼女の器量の良さというのは、このお店で培われたものか――と、ぼんやりと彼女の家で飲んだ日の事を思い出した。
「敦さん何飲む? 多分マスターが弾けばあのピアノマンがカズっちのフォロー入ると思うから、なんか頼もうよ」
メニューの載ったファイルを尚輝から渡され、何にしようかと見ていたが。