彼は、理想の tall man~first season~

これからまだまだ彼女の知らない一面を見ることになるのだろうと――そう思うと、引くという感情などなく、寧ろ興味が湧いた。


それから少し経ち、多忙な状況を回避出来たようには見えないバーテンが、オーダーを取りに席までやって来た。

尚輝が俺の分と自分の分のオーダーを伝えてくれて、そこで俺を見たバーテンと目が合った。


「あの、うちの店、初めて――ですよね?」

年齢は俺より上か下か、判断出来かねる。

恐らくこのバーテンもそう思ってのその言葉遣いなんだろう。

そう思いながら軽く頷くと、すかさず尚輝が俺を紹介してくれた。

今日ここへ来て、初めまして的な挨拶は3回目。

バーテンもトモコちゃんや柏木君のように、俺の正体を尚輝が明かすと、驚いてはいたが。

「美紗が好きそうなタイプだなって、俺の直感は当ってたか」

彼は納得と言った感じで、そして「ご贔屓によろしくお願いします」と――ちゃっかりしてるなと思わず笑ってしまったが。

なかなかの好青年。

今度、松本でも誘って来てみようかという気にはなった。


そして彼は一旦カウンターに下がり、オーダー品をすぐさま運んでくれた。
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