彼は、理想の tall man~first season~

バーテンには俺が思っていた以上に少し余裕があったのか?

尚輝に話しかけていた。


「リーマン業はどう?」

「んー、思ってた以上に楽しいよ」

「マジでか? 尚輝なら合わないって、出戻るかと思ってたけど。そうか、うまくやれてんならそれがいいな」

「企業人には企業人のやり甲斐があるってね」


隣でそれを聞きながら、入社当初を思い出した。

顔が売れてるモデルが、入社してくると知った時、大丈夫かと正直不安になったが。

周りが異色の目で見るだけで、本人は至って普通に仕事をしようとしていた。

最初は敬遠していた同僚も、尚輝と接点を持たざるを得ない状況下で、妙な蟠りはなくなり。

今じゃすっかり企業人として、会社で機能している。


美男美女の双子の兄妹で売り出せば、世で需要もあっただろうに。

未だに尚輝が業界をやめて、企業人としての道を選んだのかは不思議でならないが――。


「あ、そうだカズっち」

「ん? どうした?」

「俺らがさっき座ってたテ―ブル、一旦清算してくんない? 因みに――」
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