彼は、理想の tall man~first season~

「因みに今弾いてる奴、美紗が昔教えてた生徒だって」

「――なに、どういう事?」

「ほら、美紗の奴、昔ピアノ教えてただろ? その時、生徒の家まで練習見に行ってた事あったろ」

「ああ――それって、超お金持ちの?」

「そうそう、それがあいつだったらしいよ」

「名前は?」

「奏って言うんだけどな」

「へぇ、なに、ここに働き来たのって偶然?」

「さあ、どうなんだろうな。でも、美紗も知らなかったみたいだったし、偶然なんじゃないのか?」

「ふぅ~ん、そう」

尚輝は、何かを考えているような、そんな返答だったが――。

「ピアノ弾くために生まれて来た――その才能が、奏の人生を狂わせた、みたいな感じの謎多き青年」

「なにそれ、確かにうまいと思うけど」

全員がそのピアノの青年へと目を向けていた。


「あの時の彼が、あのピアノマン? わあ、それ超ビックリ」

トモコちゃんの発言に、会ったことがあるのかと、柏木君が問い。

「うん。学校の帰りだったかなあ。一回だけ偶然街中で会って美紗が声かけてさぁ」

「へぇ」

柏木君は軽く流した感じだったが――。
< 457 / 807 >

この作品をシェア

pagetop