彼は、理想の tall man~first season~
「因みに今弾いてる奴、美紗が昔教えてた生徒だって」
「――なに、どういう事?」
「ほら、美紗の奴、昔ピアノ教えてただろ? その時、生徒の家まで練習見に行ってた事あったろ」
「ああ――それって、超お金持ちの?」
「そうそう、それがあいつだったらしいよ」
「名前は?」
「奏って言うんだけどな」
「へぇ、なに、ここに働き来たのって偶然?」
「さあ、どうなんだろうな。でも、美紗も知らなかったみたいだったし、偶然なんじゃないのか?」
「ふぅ~ん、そう」
尚輝は、何かを考えているような、そんな返答だったが――。
「ピアノ弾くために生まれて来た――その才能が、奏の人生を狂わせた、みたいな感じの謎多き青年」
「なにそれ、確かにうまいと思うけど」
全員がそのピアノの青年へと目を向けていた。
「あの時の彼が、あのピアノマン? わあ、それ超ビックリ」
トモコちゃんの発言に、会ったことがあるのかと、柏木君が問い。
「うん。学校の帰りだったかなあ。一回だけ偶然街中で会って美紗が声かけてさぁ」
「へぇ」
柏木君は軽く流した感じだったが――。