彼は、理想の tall man~first season~

「前に奏に聞いた話じゃ、高校生の時、自宅レッスンに来てくれてたピアノの先生が、孤独な奏少年の心のよりどころで。幼気なその少年のハートを、鈍感美紗は、知らぬ間に射抜いてたらしいよ」

流石にバーテンのその言葉は、流せなかった。


「はぁ!?」
「マジで?」
「キャー!! ドラマみたい」


ただ、俺以外の3人は、愉しそうにしていた。


どこまで信憑性のある話なのかは、定かではないが。

――あの美青年が、彼女を?

そう思うと、ここで働いているのは、偶然では片付けらないだろうと、そんな想いが頭を過った。


あの美青年に、彼女が昔ピアノを――。

この前、確かにピアノを教えていたような話はしていたが。

どこか信じられない気持ちで、俺は再びホールステージに目を向けた。


素人の俺の目から見て、美青年のピアノの演奏は、実に優美で“凄い”の一言に尽きる。

機械が演奏しているんじゃないかと思うくらいの演奏に、魅せられている訳だが――。

その子のレッスンを彼女が見ていたとか――それじゃあ彼女はどれだけ凄いんだろうか?
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