彼は、理想の tall man~first season~
「遊びたいから辞めるって」
「ん?」
「美紗がピアノをやめた理由」
「――遊びたいから?」
「そう」
曲が終わって、再び暗くなり、ステージでは何かが動いてた。
それを見ながら、尚輝の言葉に耳を傾け言葉を返した。
「昔は音大に行きたいって言ってて」
「―――」
「だけど、練習よりも遊びたいって理由で、レッスンをスパッとやめやがった」
「―――」
「まあ、弾きたい時は家で練習してたから、実際やめたのは、レッスンだけだったけど」
「―――」
「俺、ここでピアノ弾く美紗を見てると、なんかムカついてくるんだよね」
「――は?」
尚輝の予想外だった言葉に、ステージから尚輝に目を移した。
「遊びたいからって、そんなくだらねぇ理由で、勝手に習い事やめて。得意でもねぇ文系の大学引っかかったからって、大学決めて。でも、やっぱりピアノは弾きたいからって、ここでバイト始めてさ、」
――お前は一体何がしてぇんだよって、思うじゃん?
尚輝は語気を少し荒げながら、鼻で笑った。