彼は、理想の tall man~first season~
だが、ちらほら帰る客もいて、なんとなく落ち着かない時間が続く。
この場合、周りが動くから気になるというよりは、彼女が気になり目で探し――帰る客が、嫌でも視界に割って入って来ると言った方が正しいが。
暫くすると、空いたテーブルのグラスや皿をピアノを弾いていた美青年が片付けているのが視界に入ってきた。
歳は二十歳くらいか?
彼の動きをなんとなし見ていると、彼の手が急に止まり。
彼の視線がステージに近いカウンターの方へと動いた。
俺の視線も美青年の視線のあとを追うように動き――そこで、彼女の姿を捕らえることが出来た。
着替えたらしいスーツ姿の彼女と例のマスターは、話をしながらカウンターの席に座った。
この間マスターと電話をしていた彼女の話し方。
その話し方から、親しい仲なんだろと思ってはいたが――。
笑っている彼女の姿を遠目であろうと、見てしまえば、なんとなく自信を失う感覚に襲われ。
入り込めない雰囲気と言ったらいいのか――肩がくっついているように見えるその距離は、あまりにも近かった。