彼は、理想の tall man~first season~

名前の話が終わったのか――次に聞こえて来た2人の会話は、仕事の話っぽくて、小難しい話をしている雰囲気だった。


ただ、私は2人がお互いを呼ぶ呼び名が、なんだか引っ掛かっていた。

会社の上司ならば、中條さんとか、中條プラス役付きで呼ぶものだと思うけど。

尚輝は敦さんと呼んでいて、中條氏は尚輝と呼んでいた。


ファーストネームで呼び合うなんて、あまり私の会社ではないことだったから、ちょっと疑問を抱いた。

上司と部下というよりは、先輩と後輩みたいな雰囲気で。

尚輝の中條氏に対する接し方を見ていると、すごく懐いている感じが私には伝わって来て、頼しているであろうことが伺えた。


名刺には海外事業部って書いてあったけど。

でも、新しい名刺が出来ていないようなことも言っていた。


尚輝は4月から、開発事業部から営業部に異動になったって聞いていたけど――。


中條氏は海外事業部から営業部に異動になったってこと?

さっき名刺をもらった時に、聞けばよかったのかな。

あの時、名前しか気にならなかったことに、ちょっと失敗した気分になった。
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