彼は、理想の tall man~first season~
奏君は、お家の人との事とか、周りの状況とかで、本当に色々気苦労もあったんだけど。
私が当時奏君に言いたかったというか、伝えたかった事は――今の言葉で伝わっていたのかも知れないと思えた。
そう思うと、あの日々が報われたように思えて、少し嬉しくなった。
目が合って、お互いなんとなく微笑み合って。
「先生、気を付けて帰ってね」
「うん、ありがとう。奏君も気を付けてね?」
「はい――おやすみなさい」
バイバイと、手を振り奏君と別れ、進行方向に体を向けた。
すると、敦君と智子とマサ君が少し離れた所で立ち止まっていた。
「中條さん、美紗は目を離してなくても危ないですかねー?」
「そうだね、間違いないね」
智子と敦君はそんな会話をしていて。
「そこまで酔ってないと思うけど」
智子に言い返すと――。
「解ってないって、本当に怖いわ」
そう、言われ。
マサ君からも、本当だよな、なんて言われて。
なんだか私は孤島に立たされたような気分になった。
「なに、泣きそうな顔して」
「え? だって、意味わからないし」