彼は、理想の tall man~first season~

「美紗は昔からそういう所あったけど、」

「え? どういう所?」

「あたしは、美紗のそういう所が結構好きだから、変わらないでいてよね」

「え――うん?」


酔っている智子は、勝手に会話を進めて、私が欲しい解答を全くくれない。

そういう所がなんなのか解らないけれど、取り合えず頷くしか出来ず――。


「中條さんは大変だと思いますけど、こういう子なんで。本当にどうか広い心で、永い目で宜しくお願いします」


理解不能なままの私は置き去りで。

智子は私を余所に、そんなことを言って、敦君に頭を下げた。


「心配しなくても大丈夫だよ」


敦君の言葉に、つい彼を見上げてしまったけれど。

視界の端で智子が頭を上げる姿が映り込んだ――瞬間、案の定智子はよろけ。

マサ君に、トモは別の意味危ない――なんて言われて、支えてもらっていた。


「カラオケ屋さんまで、転ばないで行きなよー」

「うん!!」


酔うとよく転ぶ智子が心配ではあるけど。

『心配しなくても大丈夫だよ』だなんて。

私は、敦君の言葉に、変にドキドキさせられていた――。
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