彼は、理想の tall man~first season~

行こうか――という雰囲気になったので、私達は再び駅に向かって歩き出した。

駅近くのカラオケ屋は、学生時代に度々歌いに行った場所。

ビルのネオンにそのカラオケ店は紛れており。

「今度絶対行こうね」と、再び智子と約束。

智子達と別れ、敦君と私は駅前のタクシー乗り場でタクシーを待った。


「眠いのは大丈夫?」

「歩いたら、多少眠気は飛びました」

「あ――点、追加ね」

「えっ? あっ!!」

不意をつかれて、しまったと思っても、慣れない状況に対応は困難だった。


「気分は悪くない?」


これを敬語で返して、再びの追加点は避けたかった。


「悪くない、かな」


久々の2人っきり――悪かったら、最悪だ。


「金曜だから、なかなかつかまらないかもなぁ」


独り言のようにそう言った敦君は、周囲を見回していた。

私はその横顔を盗み見て、やっぱり背が高いと改めて思いながら、なかなか姿を見せないタクシーを待った。


初めて会った日――というか、初めて敦君を見た、駅のロータリーでのことを、ぼんやりと思い出す。

あの時は、尚輝待ちだったんだっけ。
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