彼は、理想の tall man~first season~

知人から彼氏になった敦君。

未だに他人行儀っぽさが抜けないけど。

――大丈夫かな?

大丈夫でなかったら、大丈夫になるように、努力するだけなんだけど――。


「ん~~?」

それでもやっぱり、大胆に殻を破るというのは難しいんだ。


「ねぇ、大丈夫? やっぱり気分悪い?」

「え? あ、大丈夫です! すみません、ちょっと考え事をしていて」


どうやら、思案の声を上げていたらしく。

聞かれていた恥ずかしさに、思わず顔が熱くなった。


「考え事って、さっきの彼のこと?」

「え? それって、奏君のことですか?」

「――うん」

「今のは、違います。自分的なことで」


言いながら、もうこの時点で全然ダメじゃん――って。

なんだか自分にガッカリした。


「なにか悩みでもあるの?」

「――え? あ、はい。まあ、そう、ですね」

「そっか」

「――はい」


その悩み事はなにかって聞かれたら、答えられないけれど。

聞かれないのもなんだかなーって気分で。

少し、切なくなった。
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