彼は、理想の tall man~first season~
「だぁっから、ここにいるんだけどねぇ」
「お前、いい加減にしろって」
今日の小川は――何故だかテンションが高かった。
ビール3杯で酔えるとか、そんなやわな男でもないのに。
『先輩だって、高いじゃん』
『ヤス君、188だったかな』
『そうだったの? あのノッポさんでも足りなかったのか』
『べつに公差内だからいいと思ってたんだけどさ、ブーツ禁止って』
『はぁ? マジで? ブーツ駄目とかウケるんだけど』
『ウケないから。もう、他人事だと思ってさ! 女子の秋冬の楽しみ奪うとかありえる?』
『ないわー! ないねー! 先輩もちっちゃい男だわ』
『でしょう? いいかなーって思ったけど、男に合わせてまでする恋愛に虚しさ感じたわよ』
「そりゃ、哀しいかもなぁ~男の器が小さ過ぎだろ」
「――小川っ」
「だぁいじょ~ぶだよ、話に夢中で聞こえてやしねぇって」
尚も笑う小川に呆れながら、俺はビールを体内に流し込んだ。
今日は、全く酔えそうにない。
――そう思いながら。