彼は、理想の tall man~first season~

いやいや、中條氏のことは、どうでもいいって。

あまり知ろうとしない方が、今後の為にもいいだろうし。

私は踏み込む前に、そこから脱しなければと思って、フライパンの中に意識を集中させた。


冷蔵庫の中と冷凍庫の中。

尚輝が今日買い物しておくと言っていたから、わりと食材は豊富で。

居酒屋メニューっぽいのでいいかな――。

そう考えて作っていたおつまみは、それなりの種類が出来上がっていた。


「なぁ、まだ?」


丁度のタイミングで、キッチンに顔を覗かせた尚輝は、出来てんじゃんか――なんて言いながら、いそいそとそれらを運び始めた。


「げっ、美紗、こっちで飲んでたのかよ」


あ――やば、バレた。


「なんか、ちょっと喉が渇いちゃって」


1回運んで戻って来た尚輝に、早速見つかってしまった。

しかも、最悪なことに、声がデカい。

恥ずかしいからやめて――中條氏に聞こえるでしょ。

そんな、私の辛うじてある乙女心を、まるで解っていないらしい尚輝は、リビングで今の会話を間違いなく聞いていたであろう中條氏に――

「美紗が作りながらこっそり飲んでた」

と、そんないらない補足までする始末。
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