彼は、理想の tall man~first season~

そう思っていた私を余所に、敦君の携帯が震えて見せた。


「お、晃だ――助かった」


まだ起きていたらしい晃から、折り返し電話のようで。

敦君は、安堵の表情で通話ボタンを押した。


私はというと――安堵の気持ちも抱いたけど、なんとなくガッカリな気分だった。

帰宅困難な状況であれば、よかったらウチに――的な感じになっていただろうし。

そうすれば、もう少し一緒の時間を過ごせて、朝食だって一緒に食べられたかも知れない。


でも――敦君は出張明けで疲れもあるから、自宅に帰れるならそれが一番な訳で。

それなら、これで良かったんだよね――なんて、ひとり納得していると。


「――なに、お前、今マンションにいないのか?」


敦君の声に、私は思わず顔を見上げた。


「あぁーそう。お前も、か」


晃はまだ帰ってないの?

敦君は再び天を仰ぎ――晃が何かを言っているんだろう、相槌を打っていた。

そして――いや、まあ、なんとかする、と。

そう言って通話を終えた。


状況を察するに――

「あの、ウチで良かったら」

私には、差し当たりその言葉しか、見つからなかった。
< 501 / 807 >

この作品をシェア

pagetop