彼は、理想の tall man~first season~
そう思っていた私を余所に、敦君の携帯が震えて見せた。
「お、晃だ――助かった」
まだ起きていたらしい晃から、折り返し電話のようで。
敦君は、安堵の表情で通話ボタンを押した。
私はというと――安堵の気持ちも抱いたけど、なんとなくガッカリな気分だった。
帰宅困難な状況であれば、よかったらウチに――的な感じになっていただろうし。
そうすれば、もう少し一緒の時間を過ごせて、朝食だって一緒に食べられたかも知れない。
でも――敦君は出張明けで疲れもあるから、自宅に帰れるならそれが一番な訳で。
それなら、これで良かったんだよね――なんて、ひとり納得していると。
「――なに、お前、今マンションにいないのか?」
敦君の声に、私は思わず顔を見上げた。
「あぁーそう。お前も、か」
晃はまだ帰ってないの?
敦君は再び天を仰ぎ――晃が何かを言っているんだろう、相槌を打っていた。
そして――いや、まあ、なんとかする、と。
そう言って通話を終えた。
状況を察するに――
「あの、ウチで良かったら」
私には、差し当たりその言葉しか、見つからなかった。