彼は、理想の tall man~first season~
敦君は、苦笑いをして――
「申し訳ないけど、お願い出来るかな」
――本当に申し訳なさそうに、そう言うから、私は再び距離を感じてしまった。
それでも、今日はまだ一緒にいられると思えば、なかなか嬉しいもので。
同僚と飲みに行き、終電を見送ってしまい、同僚宅で現在飲んでいるらしい晃に感謝した。
微妙だった眠気も酔いもすっかり醒めた感じだ。
今日は尚輝も晃もいない――。
そう考えると、私は単純にそれを悠々しく思っていた。
エントランスを通り抜け、私達を待ち構えていたかのように、待機していたエレベーターに乗り込んだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
エレベーターの箱が上昇して、なんとなくお互いに無言。
階を示す数字の点灯が、徐々に私の部屋の階に近付く。
そして扉が開き、私は先に出るように促され、箱から出た。
出て数歩、歩いて振り返ると、いい男。
やっぱり敦君は背が高い。
智子がスーツが似合うと言っていたけれど、本当にそうだと、思わず見惚れて凝視していた私に、彼は不思議そうに、「どうしたの?」そう聞いて来た。