彼は、理想の tall man~first season~
敦君はベッドの脇に腰を下ろしてしまった。
ベッドが狭いと言ったことに対して、『大丈夫だよ』と、さっき敦君が言った言葉の意味を、私はなんとなく理解した。
「あの、そこで寝られるんですか?」
私の問いに、敦君は「どこでも寝られる」と――的を得たような得ていないような、微妙な返し。
床に座ってベッドに寄り掛かって寝る、みたいな体勢だった敦君の背中を、私の目は捉え。
「そんな体勢じゃ、絶対に疲れちゃいますから」
そう言いながら、私は体を起こした。
でも、そうは言っても、一緒に寝るのは、間違いなく緊張してしまう。
この距離感に、少し安心したのも事実なんだけど――でも、この距離感だから、変われない何かがある気もして。
「あの、」
――って、口を開いた。
だけど、ほぼ同時に、敦君が「美紗ちゃん」と――私の名前を呼んだんだ。
それは、まるで私の言葉の先をあえて遮ったと思えたタイミング。
私は、何を言われるのか、ビクビクしながら敦君をジッと見ていた。
そして、敦君が振り返って私の方を見るから、ベッドの上で思わず固まってしまった。