彼は、理想の tall man~first season~

その直後、ギシリとベッドの右側が軽く沈んだ。


「大丈夫?」

と、敦君の声。


それはベッドに腰を掛けての問いなのか――耳は塞いでいたけれど、なんとなく頭上から聞こえた気がした。

ただ、私はそれには応えられずで、激しい雷雨が一刻も早く止んで欲しいと、願った。


度重なる恐怖と、繰り返される緊張。

なんだか酷く疲れを感じる。

時間も時間だし、なによりお酒を多量に体内に流し込んでいるから、まぁそりゃそうだろうって感じだけど。


「体、起こせる?」

塞いでいた手は、敦君の手によって解かれ。

頷いて体を起こすと、敦君にゆっくり引っ張り寄せられた感じで。

ふわりと――敦君の腕の中に、私の体は移動していた。


「俺も男だから、」

「――え?」

「好きな子の隣で寝て、手を出さないで居られる自信なんてないんだけど、」

「――え?」

「でもやっぱり、放ってもおけないから」

「―――」

「一緒に寝ようか」


言われた事への驚きによって、顔を上げた私。

聞きたい事は勿論あった。


けれど――

「今日はこれだけで我慢するから、これだけは許して」

―――と。

< 526 / 807 >

この作品をシェア

pagetop