彼は、理想の tall man~first season~

―――時だった。


「ちょっと、待って」

「――はい?」


耳に届いたのは、目の前に座る敦君の声。


「今日、夜、予定あった?」

「え? いえ、特には」

「俺は、美紗ちゃんも一緒にって思ってるんだけど」

「――えっ? でも、久々にお友達と飲まれるなら、私って絶対にお邪魔ですよね」

「それ、誰が決めたの?」

「―――」


それは私ですけど――なんて、とてもじゃないけど、言える雰囲気ではなかった。


別に、それは敦君が怒っているからとか、ではない。

寧ろ柔らかい雰囲気過ぎて、逆に言えない雰囲気だったんだ。

誰も私に帰れだなんて言っていないし、邪魔だとも言っていない。

そもそも、飲みに行くかも知れないという、憶測段階での話。

ただ、久々に会うお友達と飲みに行くのならば、水入らずの飲み会にした方が、いいだろうというだけの考え――。

だけど、そう思っていた所で、昨日のマスターからの忠告を思い出して、私はハッとした。


“だろう”で決めていた、自らの考えは誤った判断だったと。

そして、きっと敦君も勝手にそう決め付けられて、いい気はしなかったのではと――。
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