彼は、理想の tall man~first season~

「中條はそうじゃないって思うかも知れないけど、見てたら、なんかな」


同じ部内で付き合うとかは、面倒としか思えず、誰彼構わず断った。

夏美からは、部の活動に支障を来したくないから、誰にも言わないで欲しいと口止めをされ、更に、普段通りでお願いと言われたが――。


「部のマネージャーと部長と副部。夏美と話す機会は、たんとあったろう?」

「まぁな」

「夏美から向けられる目が、特別だとか思わなかったか?」

「それは――ねぇな」

「中條は、いい意味で、すかしてたもんな。でも、傍から見てたら、夏美の口元キュインは半端なかったぞ」

「そうなのか? って、お前それ本当にそうなのか?」

「それって?」

「その口元キュインってやつだよ」

「ああ――女は自分を女として見せようとする時、目だけじゃなくて、口角の上がり具合が重要なんだと」

「――何情報なんだよ」

「ん? 俺の兄貴からの情報。昔から口癖のように言ってた」

「へぇ」

「俺が高校2~3年の時だったかな。そういう女には気を付けろって、兄貴が実家に帰省する度に言われてた記憶がある」

「なるほど、な」
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