彼は、理想の tall man~first season~
「本当に、お上手なんですね」
「そう? それほどでも・・・・・・あるか~」
「あります、あります」
長山との話に夢中で、間近で聞こえた藤本と彼女の会話に気が付いた――。
「なあ、どうだった?」
「よかったんじゃないか? なあ、中條?」
「そうだな。今、本番でも全く問題ないレベルだろ」
まさか聞いてなかったと口には出来ず。
恐らく、長山も聞いてなかったと思うが――誤魔化した。
「ああ、そうだ!! 丁度良かった。今回のイベントさ、ちょっと風変わりなイベントにしようと思ってさ」
突然そう切り出した長山は、バッグの中から何かを漁り始め。
そして、何事かと疑問を抱きながら、俺たちは長山の動向を見守り。
俺の隣に腰を下ろした彼女も、興味深げに長山に視線を送っていた。
彼女の横顔を見ていたら、さっき長山と彼女の話をしていたからか?
彼女を引き寄せて、抱きしめたい――。
そんな衝動が、頭の中をよぎった。
そんな事態に、己自身が驚かされる。
恋人と変態は紙一重。
彼女へ向けていた視線を長山に移して、よぎった変な衝動は、頭から追い払った。
―中條 side end―