彼は、理想の tall man~first season~
chapter.28
藤本さんの歌唱力に安堵しながら席に戻ると――
「ああ、そうだ!! 丁度良かった。今回のイベントさ、ちょっと風変わりなイベントにしようと思って」
長山さんはバッグの中を漁り、一枚の紙を取り出した。
「これ、引いてくれる?」
用紙を広げてテーブルに置き、その広げられた用紙を見ると、それはあみだくじで――。
「なんだよ、これ?」
敦君は、私の気持ちをそのまま長山さんにぶつけてくれた。
けれど――
「それは引いてからのお楽しみだろ」
長山さんの返事は、そんな返しで。
「んじゃ、中條が引いて」
「――はぁ?」
「美紗ちゃん、中條が変なの引き当てても恨みっこなしね」
そんな意味の解らないやり取りは続き。
「左から何番目?」
ペンを取り出した長山さんは、線の頭に振られている番号を選ぶよう敦君に迫っていた。
「5番」
「中條は左から、5番目っと」
番号の所に、「中條」と記入した長山さんは、あみだくじの底を目指して、指で辿り。
おお、正統派って感じでいいじゃん――と。
隠されていた部分を、開いてそう言った。