彼は、理想の tall man~first season~

長山さんも敦君も藤本さんには同調しなかった。

でも、力いっぱいの藤本さんの言葉を耳にした以上、それで行かないとダメという雰囲気は、なんとなく感じた。


「ルーズソックス、探してみます」

「そうして、そうして!」

「・・・・・・はい」


語気にも目力にも圧倒されて。

変な所に拘る人っているものだって、頭の片隅では理解していても。

それがルーズソックスで、って思うと、なんだかおかしくなってしまって。

堪えきれず、笑ってしまった。


「藤本は言うことが、オヤジくさいな」

「はぁ? 30過ぎたら立派なオジサンだぞ? 年相応の発言じゃんかよ」


長山さんと敦君に向かって、正当さを主張する藤本さん。

必死なその姿に、やっぱりおかしくて笑ってしまった。


親しみやすい藤本さんは、ムードメーカーって敦君が言っていたけど、なんとなく解る気がする。

練習もやり易かったし、気構えていた私は、藤本さんの人柄に安堵も出来た。


「もう少し練習する?」

「あ、いいですか? 弾いて間を憶えておきたいので」

「それじゃやろうか」

「はい、お願いします」
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