彼は、理想の tall man~first season~
「全くダメだからな」
「そうなのか?」
藤本さんの彼女は、体質的にアルコールがダメな人なのかな?
全く飲めない人の方が、健康的でいい気もするけど――。
「飯食い行っても、酒飲まないから、飯食って終わり」
「へぇ」
「たまには2人で酒飲んで――って気分の時もあるじゃん? でも、それが出来ねぇからな」
「ま、酒が入れば、入ったなりのトークってのがあるもんな」
「そうそう」
それは、普段しらふでは話せないような話も、お酒が入れば話せたり――とか。
そういうことなのかな?
普段言われたらカチンと来る話でも、お酒が入ると、セーフになることもある。
会社の付き合いで、そういうのってあったりするけど。
恋人同士でも、やっぱりそういうのって、必要なのかな?
「ま、結局ないものねだりなんだけどなー」
どこか諦めたようにそう言った藤本さんは、ジョッキに残っていた3分の1のビールを飲み干した。
「藤本は結婚に不向きかもな」
「やっぱそう思う? 俺も自分でそう思う」
ビールを飲み終えて手持無沙汰な感じなのか――藤本さんは、ジョッキを両手で軽く挟み、指先で左右に行き来させ、揺らしていた。