彼は、理想の tall man~first season~

「藤本は、言いたいこと、言えないタイプか?」

「ん? 口じゃ負けるからな、言えないってよりも言わない。何か言っても余計にストレスが溜まるし。もう面倒だから言われっ放し。まぁ、それも結局はストレス溜まるんだけどな」

「末期だな」

「そう末期なのよ」


藤本さんは、はぁ・・・・・・って、重い溜息を吐き。

長山さんと敦君は、少々困り顔で藤本さんを見ていた。

のっけから、こんなテンションで大丈夫なんだろうか――と、不謹慎にも思ってしまった。

それでも飲まないとやっていられない時もあると思って、私は生ビールの追加を注文する為に席を立った。


「すみません、生1つ追加でお願いします」

「はい、すぐお持ちします」


幸せの絶頂期であろう長山さんの隣に、恋愛末期の藤本さん。

2人は余りにも対局している。

敦君はどんな気持ちで2人を見ているんだろうと、思いながら席に戻ろうとしたけれど――。


「なんでも俺がやって当り前、みたいな――そんな感じ」

「まあ、女は基本自己中だからな」


聞こえて来た会話に、思わず足が止まってしまった。


「いちいち言う事が恩着せがましいし」
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