彼は、理想の tall man~first season~
「ああ、あれか? あたしはいつもこうしてあげてるのに、なんで貴方はこうなわけ? みたいな?」
「そうそう。たまの1回の失態が、数十倍の出来事みたいな感じになって返ってくる」
「彼女、気が強いのか?」
「表向きはな」
「表向き?」
「そう。強そうなイメージだった。けど、違ったってとこになんか惹かれちまったんだけど」
「へぇ」
「女がある程度の地位と金を得てると、全く可愛げもなくなるんだって――最近知ったわ」
「アハハッ、気付くの遅すぎだろそれ」
救いだったのは、敦君がずっと無言だったということで。
長山さんと藤本さんの会話が途切れることはなく、私はどのタイミングで戻ろうか悩んだ。
だけど、通路で立っていた時、店員さんが追加のビールを運ぶ為に襖を開けたので、私もそのタイミングで、席に戻った。
「お兄さん、5分後、生3つ追加で持って来て」
「はい! ありがとうございます」
「5分後ね、5分後」
「はい、必ず5分後に、」
失礼します――なんて言いながら出て行った店員さんの背中を目で追った。
というか、目で追うしかない状況で、なんとなく居心地が悪かった。