彼は、理想の tall man~first season~

でも、基本的には楽しい人であるのは間違いないと思うし。

たまにはこうして誰かに愚痴を零したいのも理解出来なくはないから、聞き流すのがベストなんだろうって。

そう思っていると――。


「好き嫌いは、ない?」

「――え? あ、はい、大丈夫です」

「適当に頼んじゃっていい?」

「はい、お任せします」


隣に座っている敦君からの気遣い。

だけど、それに返答した直後、再び波はやって来たんだ。


「いや、絶対、食の好みは男女違うから選んでもらった方がいいって」


藤本さんが、訴えるように敦君にそう言い放ち。


「頼んだ物が届いてから、あたしはあれの方が良かったとか言われてみろ? 末期への一歩だぞ」

「ふっ、怖いこと言うな」

「いや、な? まず選んでもらって、相手の食の好みを探った方が、」


そこで言い留めた藤本さんは、私に視線を寄越すと、「ね?」と――なんとなくの同意を向けられた。


「付き合い始めは、特にお任せでなんて、絶対しちゃダメでしょう」

「・・・・・・え?」

「美紗ちゃんは、なにが食べたいの?」

「えっと・・・・・・やきとり?」
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