彼は、理想の tall man~first season~
何が食べたいかと聞かれると、具体的に何がってことも言えなくて、ここは焼鳥屋さんな訳だからと、大きな括りで、しかも疑問形で答えると――。
「かしらは好き?」
「んー? あんまり食べたことないですかね」
「それじゃネギマは?」
「わりと好きです」
「つくねは?」
「軟骨入りは苦手ですけど、普通のつくねは好きです」
「じゃあ、軟骨苦手なの?」
「軟骨は軟骨で、大好きです」
「はい! っそういうことで、好きにも種類がある訳なんで、そういうのを参考にしないと」
メニューを開きながら、どこか得意気に敦君に向かって言った藤本さん。
細かく聞かれると、好みって確かに顕著だ。
「お前さ、自分の付き合いたての時にそれやってりゃ良かっただけの話だよな?」
「そう! だから、今もう末期なワケよ」
「なるほど・・・・・・」
長山さんと藤本さんの会話に、なんだか妙に納得させられてしまった私は、思わず声を上げていた。
「失敗例はいくらでも語れるからね、なんでも聞いてよ」
藤本さんは再び得意気にそう言い放った。
微妙だけど、これはこれで貴重な意見なのかも知れない。