彼は、理想の tall man~first season~

「焼鳥だけじゃ、あれだろうから、何か頼む?」


敦君からメニューを渡され、何を頼もうか悩みながらペラリと捲り見た。


「食べたい物じゃんじゃん頼んでいいからね」


長山さんからのあおりに、軽く頷いてはみたもの、初めて飲む人との、こういうメニューチョイスって本当に悩んでしまう。

だけど、すっかりお腹は空き、どれもこれも美味しそうで目移りだ。


――鶏刺しって、鶏のお刺身みたいなもの?

馬なら食べたことはあるけど、鶏ってないかも。

鶏ハムじゃがパリサラダ――。

え、鶏ハム?

あまり入る機会のない焼鳥屋さんの、興味深いメニューに、私はすっかり頼む気満々になっていた。


「何かあった?」

頷いて、メニューを指して、他には何かありますか?と、敦君に委ね。

一緒にメニューを見ていると、少しして前から感じた視線。


気になって顔を上げると、長山さんと藤本さんと目が合った。


「いいね、仲睦まじい感じが」

藤本さんからちゃちゃられて、恥ずかしさが込み上げる。

仲睦まじいほどの仲にもなっていないようにも思うんだけど。


「いや、初々しいね」

そう言われてしまうと、縮まってない距離が、逆に新鮮さを物語っているように思えた。
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