彼は、理想の tall man~first season~
父が不在ということになれば、母は暇になる。
尚輝の気弱な雰囲気を目の当たりにした私は、本当にピンチなのかも知れないと、不安を感じずにはいられなかった――。
高校はそこそこの進学校だったから、友達も当たり前に大学進学を選択。
その頃の友達も、大学時代の友達も、途中で中退したりとかは無く。
だから、周りの友達はみんな社会人としてバリバリ働いている。
中学時代の友達は、ちらほら結婚なんて話しが耳に届いてくるけれど。
仲が良かった友達は、彼氏がいる子、いない子半々な感じで。
周りは特に結婚だとかで焦った感じもないんだけど――。
私に全く男の気配がないから、お母さんが心配して、今から焦らせようとか、そういう作戦なのか、と――ちょっと都合良く考えた。
それにしても、本当に女は面倒だと、こういう時に改めて実感してしまう。
尚輝が煙草を吸う姿が視界端に入り込んで来て、余計に増すイライラ。
もう、部屋に戻ろうかな――そう思って腰を浮かそうとした時、「敦さん」と、尚輝はカウンターの奥から顔をひょこっと出して、中條氏を呼び――。