彼は、理想の tall man~first season~
「なあ、ここ禁煙なのか?」
「特に書いてないから、大丈夫なんじゃないか?」
「でも、灰皿置いてなくね?」
うずうずしていた私の隣で、なんともタイムリーな話を長山さんと松本さんがし始め、嫌でも吸えるんじゃないかという期待が膨らんだ。
藤本さんが何故か敦君に軽く、いいのか?と確認して。
私をチラッと見てから軽く頷いた敦君を見て、藤本さんは素晴らしい反応で店員さんを呼び。
「お兄さん、今更なんだけど、ここって禁煙?」
女の子みたいな口調で首を傾げながら、おちゃめな感じで確認を取っていた。
どうやら禁煙でもなんでもなかったらしく、店員さんは灰皿を3つ持って来てくれて。
そのひとつを藤本さんは引き寄せると、素早い動作でポケットから煙草を取り出して、火を点けていた。
「長山は、止めたのか?」
「ああ、最近だけどな」
「偉いな」
「松本は?」
「俺は飲むとダメなんだよな。夏美には黙ってるけど、飲みに行くと、たまに吸ってる」
その会話の傍ら、灰皿をひとつ自分の方へ引き寄せた敦君。
それを見た藤本さんは、敦君に向かって、タバコやめたんじゃなかったのか?と――。