彼は、理想の tall man~first season~

フッと笑っただけで、その言葉を無視して煙草に火を点けた敦君は、松本さんに煙草の箱を渡していた。


ってゆうか――長山さんは別として、みんな喫煙者だったの?

よくそれで今の今まで吸わずにいられたものだと、逆に感心してしまうほどで。

その事実に、少し気が抜けてしまった。


ただ一人、気まずさから煙草を出すタイミングを見失っていた私。


だけど、その時――吸う?と。

敦君が自分の吸っていた煙草のフィルターよりも少し上を持って、フィルターの断面を私に向けてそう聞いて来るので。

いきなりのそれにドキドキしたけれど――。

そのまま吸っていいような仕草だったので、その煙草に軽く口を付けて、深く吸い込み煙を吐いた。


「え? 美紗ちゃん吸うの?」

「酔った時だけな」

「意外だな」


私へ向けられた藤本さんと長山さんの好奇の目。

酔った時だけな――と、そう言ったのは敦君だけど。

きっと私は、2人の中では、非喫煙者というカテゴリーにいたのだろうことを、悟った。


でも、敦君は松本さんとこの前飲みに行った時は、吸ったら?って、そう言ってくれたのに――。
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