彼は、理想の tall man~first season~

今日は駄目なのかな?

いや、べつに駄目だと言われた訳じゃないけど。

寧ろ勧められて吸った的な感じになってるし。

でも、酔った時だけって言ったって事は――。

どういうことなんだろう?


だけど、そう考えていた時、再び敦君から煙草を向けられた。

どうも煙草からは手を放す気がないらしい敦君。

その煙草に再び私は口を付け、吸い込んだ。


なんだか軽く雛鳥状態な気がしないでもないんだけど。

公開間接キスみたいなその行為は、私をドキドキさせるには本当に十分過ぎて、藤本さんの前からの視線に恥ずかしさが込み上げる。


普段自分で好んで買って吸っている煙草とは、少し味の違った煙草は、私のよりもタールが高くて、吐いた煙も濃い。


ただ、もう一回吸いたくて、敦君を見てそれを目で訴えると、気付いてくれた敦君は、私の口元に再びフィルターの先を近付けてくれた。


「お前、俺の前でいちゃつくなよ」


藤本さんから、そうチャチャを言われて、一気に羞恥に襲われる私を余所に、敦君はフッと笑っているだけ。

それは余裕が滲み出ていて、いい男に見えていたのが、更に3割増しにいい男に見えてくる。
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