彼は、理想の tall man~first season~
「ね、中條のどこがいいの?」
「――えっ?」
煙草を指にはさみながら、ジッポの蓋をカチカチ動かしている藤本さんからそう聞かれ。
「こいつ、冷たくない?」
「えっと――冷たくは、ないと思いますけど」
この話の展開に、私は少々戸惑っていた。
「どこが好きなの?」
「どこ、ですか? んー雰囲気が好きですかね――いやいや、いいですこういう話は、恥ずかしいので」
本人にさえ好きとか言ってないように思うのに。
こういう場でそれを言うのも急に気恥ずかしくなり。
それを拒否しながら、もはやもう飲むしか道は残されていなかった。
「雰囲気って、どんな?」
「――っ、え?」
更に突っ込んで藤本さんが聞いて来るから、飲みかけていた日本酒が、零れそうだった。
「あのっ、雰囲気は雰囲気ですよ――なんていうか、私が落ち着くというか」
「なに、中條って癒し系?」
「えと、あの、癒し系かどうかは解りませんけど。中條さんの雰囲気が、一緒にいると落ち着けるというかなんというか」
「へぇ~」
軽くそう返され、もしかして、今の言い方で誤解が生じていないか心配になった。