彼は、理想の tall man~first season~
「ごめんね」
「え?」
「煙草」
「いえいえ、とんでもない」
「俺は、特に気にもしないんだけど、女性の喫煙に多少なり偏見持ってる奴もいるから」
「あの、それってあの場にそう思っている人が、いたってことですか?」
「藤本も松本もあんま気にしないけど、」
「それじゃ、長山さんが?」
「んー、実際今もその考えなのかは判らないけど、昔は女の子が吸うのは嫌いだったから」
苦笑い混じりにそう言った敦君の言葉に、私が吸った時の長山さんの驚いたような表情と、意外という言葉をぼんやりと思い出した。
「まあ、この間まで長山自身も吸ってたような感じだし、もういい大人って年齢にもなったから、別にいいかなって思いはしたんだけど」
あの場で、もし私がなんの躊躇もせず煙草を吸っていたら、長山さんからなにか言われていた可能性も否めず。
それはやっぱり肩身狭く感じていたかも知れない。
敦君は、恐らくそうならないように気遣ってああしてくれたんだろう。
何か理由があるから私に直接的に喫煙をすすめなかったのかなって、なんとなく思ってはいたけど。
理由が知れてなんだかすっきりした気持ちだった。