彼は、理想の tall man~first season~
「でも私――別に家事が嫌って訳じゃなくて、私がしたことをちゃんと尚輝が認めてくれているのかっていうことの方が、私にとっては結構重要なんです」
私がそう言うと、フッと笑った気配を見せた敦君が、「かわいいね」と――。
今の話のどこにそんな要素があったのか不思議でならないことを言って、立ち上がった。
「会社でいうところの、企業理念の感謝の理だね」
「――え? あ、はい」
私の言っていることの意味を、恐らく理解はしてくれているんだろうけど――。
企業理念なんて言葉が飛び出すもんだから、吃驚だった。
「尚輝は美紗ちゃんに甘えてんだろうけど、助かってるって、思ってると思うよ」
「それは――」
「尚輝のやつ、会社で弁当食べるときさ、」
「はい」
「ちゃんと、箸揃えて、いただきますって」
「――え?」
「最初はちょっと変わった奴だなって思ってたけど。この前尚輝のお弁当作ってるって言ってたじゃない?」
「はい」
「だから、それは多分、美紗ちゃんへの感謝の気持ちの現れなんじゃないかなって」
「――ぇ?」
「今話聞いてて、そうなんじゃないかって、ちょっと思った」