彼は、理想の tall man~first season~

「あのっ、私、どんな顔してました?」

「ん? ちょっと拗ねた感じの表情かな」

「拗ねた、感じの、表情?」

「それ見て、さっき可愛いなって思ったんだけど」

「そう、なん、ですか?」


可愛いって響きを耳にして、咄嗟に恥ずかしいと思っていた私に、相手を嫌だと思ってたら、人間て表情に出るから――と。

敦君は続けてそう言った。


「嫌だと思ってたら露骨に嫌な表情で話す人もいれば、顔には出さないように意識するが故にどこか表情が引きつってたりとか――負の感情って、隠せるようで隠せないからね」


なるほど――と、感心しながら聞いていると。

姉貴が露骨なタイプなんだけどね、と。

そう言って、悪戯に笑った敦君は、この先私が愚痴をこぼし易い雰囲気を、今の言葉で作ってくれたようにも思えた。


「気を抜ける場所があれば、そこでふっと抜くことも大事なことだよ」

「――はい」


それは、その場所を敦君にしてもいいってことで、そう言ってくれているのかな?

ベンチに座る私とベンチから少しだけ離れて立っている敦君。

背中を向けているから、どんな表情か、伺い知ることは出来ないけれど――。
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