彼は、理想の tall man~first season~

でも、俺は――と。

中條氏がそう発した言葉に、不本意ではあるけど、私はかなり意識を集中させていた。


私の中では、久々にあり得ないくらいの緊張が走っていて、全身がピリピリし始め。

聞きたい、けど、聞きたくないような。

逃げ出したい――そんな風に思いながらも、意識は中條氏の方にちゃんと向いていた。


「それで多少気が強い子でも、許容範囲内だけど」


耳に届いたその言葉に、全身からピリピリとしていたものが、スッと抜けて行くのを感じた。

世の中には、奇特な人もいるんだね――なんて、私はどこか他人事に考えていた。


「なら、美紗でも、許容内?」

「ちょっ、尚輝!! 冗談でも、そういうの聞くのヤメテ」


こういう時の答えなんてアテにならないし、聞きたくない。

完全に面白がっているとしか思えなかった尚輝の言葉に、私は声を荒げた。


けど、「冗談で聞いてなんかねぇし」と――尚輝はそう言って、私を黙らせた。


今日の尚輝は、かなり変だ。

かなり性格が悪くも感じて、それにも私は戸惑わされていた。
< 63 / 807 >

この作品をシェア

pagetop