彼は、理想の tall man~first season~

「それで、そこから先は?」

「え――特にはないですけど」

「特には、ないって?」

「いや、ご飯を食べて、食後にお茶を飲んで――で、まあ、明日仕事だしってことで」

「はっ?」

「いや、はっ? と言われましても」

「チューとかもないの?」

「それは――雷の夜に1回」

「なに、雷の夜って?」

「あの、それは――」


そこに至るまでの経緯を遡って説明すると、智子はジッと私を見たまま、何も言わずに固まっていた。

そして、3回大袈裟な感じで瞬きをすると――

「ねえ、一晩一緒に寝てて、キスのみ?」

呆れた感じで聞いて来た。


「そう、です、けど」

「中條さん、あんななりして、晩熟男子なの?」

「――それ、私に聞かれても、ねぇ?」

「ねぇ、じゃないし!! 私の経験上だけどね、若い頃はそんな感じでもいいよ、別に。一種それをどうやってそういう方向にもって行くか、みたいなのが駆け引きでもあったりするから」

「そうなの?」


急に興奮し始めた智子に、ちょっと腰が引けつつ。

でも、何かの参考になればと、意識を集中させた。


「でも、大人になったら話は別よ」

「え、別なの?」
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