彼は、理想の tall man~first season~

それは、誰にも言われたことがなかったことで。

自分でも改めて考えたりしたこともなかった。

だから、自分がそういう傾向にあるとか、深く思うこともなかったんだけど。

智子の言ったことは、強ち間違いでもなく――。

ただ、いざそれを言葉にして言われると、言い当てられた感じで、踏み込まれたことのなかった領域なだけに、胸がざわついた。


「美紗、完璧じゃなくていいんだからね?」

「――え?」

「私から見た美紗は、恋愛は不器用でも、それ意外の部分は、なんでも当たり前に出来ちゃって、器用な子でさ」

「なに、いきなり?」


智子の私に対しての話に、戸惑いを隠せなかった。


「無理してるんじゃないのかなって、ずっと思ってた」

「え?」

「すべてを持っていそうな雰囲気があるから――逆に人に甘えたり頼ったりが出来ないんじゃないかなって」

「―――」

「常にかっこいい女ってイメージ持たれてたでしょ? それをその通りにやり過ごすって、凄いと思ってたけど。でもさ――そろそろ、楽に生きること考えてもいいんじゃない?」


それは――それに鉛を付けて、心の底に沈めていた気持ちだった。
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