彼は、理想の tall man~first season~

私の前を歩いていた男性2人が突然立ち止まった。

いきなり立ち止まられ、歩く速度と歩こうとしていた進路の邪魔をされたので、速度を更に緩め、その男性2人を避けて追い抜き歩いていると。


――ねぇねぇねぇ、と。

その男性が発した声が背後で聞こえ、嫌な予感。


この時間に先頭車両に乗ったことを、後悔した時には既に時遅し。

私の両脇には、今さっき追い抜いた男性が2人。


「これから飲み直しに行くんだけど、一緒にどう?」


これが街中なら、間違いなくスルーで、人ごみに紛れて、はいさようなら、なんだけど――。

これは、改札まで歩いて行かないと駄目なパターン?

最悪だと思いながら早歩きしようと考えていると――。


シカトしないでよ、と。


完全に酔った感じの男は、突然腕を掴んで来た。

本当に、最悪――だ。


「あの、放して、もらえませんか?」


この状況でそう言っても、放す人なんていないだろうけど。


「ねぇ、飲み行こうよ」

「あの、本当に、帰らないとなので」


案の定、放しては貰えず。


「いーじゃん、明日木曜日だしさぁ」


今日が金曜だろうとお断りなんだけど――。
< 637 / 807 >

この作品をシェア

pagetop