彼は、理想の tall man~first season~
パッと見た感じ、同年代より上の世代のサラリーマン。
掴まれている左腕は、本当に冗談抜きで痛く――この状況での2対1は、分が悪過ぎだ。
仕事終えてヨガに行って、程良い疲労感が、これでかなりの疲労感に移行しつつある。
――でも、ちょっと待って。
改札を出たロータリーの角に、確か交番があったはず。
飲みに行く振りをして、その交番のお巡りさんにバトンタッチもありなんじゃ?
ちょっと冷静になって、ホームの真ん中辺りにある階段に向かって歩いていると――。
ホームの先の反対側から階段に向かって歩いて来る人の姿が視界に映り、私はホッとして、泣きそうになった。
だけど、その直後――
「ねーちょっと、聞いてる?」
私の前に男が回り込んで、私の行く手を阻んだ。
「一杯だけだからさぁ」
右にいた男が今目の前にいて、私の右肩を叩くように手を置くと、軽く掴まれた。
2人から左腕と右肩を掴まれた状態なんて、本当に分が悪い。
こんな変にしつこいのも珍しいというか――1人の時にここまで追い込まれるのは初めてで。
このピンチをどう切り抜けたらいいのか、恐怖で身動きが取れなくなった。