彼は、理想の tall man~first season~

――ありがと。

そう言うと、なにが起きたのかを聞かれ、一部始終話すと。

気を付けろよと、普段とは違って、真面目な声で返された。

頷くと、ほんの少しの沈黙。


その後、タクシーの運転手さんが、夜は帰宅者ばかりだから、人波はあっという間に退くような話をし始め、だから気を付けて下さいね――と。

注意を喚起された。


「仕事で遅かったのか?」

「ううん、ヨガ教室行って、その後、智子とご飯食べてて」

「お前ら、水曜だってのに元気だな」

「そうでもないけど、そういう習慣だから」


軽くそんな会話をしながら、到着したマンション。

お礼を言って、タクシーから降りた。


「遅くなる時は、尚輝とかあっちゃんとかと、待ち合わせして帰って来た方がいいんじゃねぇの?」

「でも、今日みたいなことは、ここ来てから初めてだし」

「でも、帰りもこの時間だと、道歩くの怖くねぇ?」

「――まぁ、多少はね」

「変なのに追い回されたら、敵わねえだろ?」

「――うん」

「今日はたまたま俺が居合わせたから良かったようなもんで、いなかったら、マジにどうしてたんだよ?」

「それは――飲み行く振りをして、」
< 642 / 807 >

この作品をシェア

pagetop